●第一回 水原弘(歌手)
「馬鹿野郎! 艶歌の歌手ってのは、読んで字の通り、てめえの生き方に艶がなくては駄目なのさ。それを、サラリーマンのようにチビチビ金を貯めるようなケツの穴の小せえことをしていちゃ、艶も花もあるもんか。黒い花びらが、黒いしおれ花になっちまうぜ!」 村松友視『黒い花びら』(河出書房新社)より
水原弘(みずはらひろし)/昭和を代表するスター歌手。昭和34年、デビュー曲『黒い花びら』で、第一回レコード大賞を受賞。夜の街での豪遊や、賭博などにより莫大な借金を抱える。昭和42年に『君こそわが命』で奇跡のカムバックを果たすも、散財はエスカレート。さらなる借金を背負い、返済のため体を壊しても休みなく歌い続け、巡業先の九州にて食道静脈瘤破裂で大量の血を吐き死去。享年42歳。上記の名言は、あまりの散財ぶりを見かねた友人が貯金を勧めたところ、いきなり殴りかかって発した言葉であった。